2011年01月27日

さまざまな薬剤師の仕事先

薬局、病院、製薬メーカー。
これら一般的な薬剤師の就職先のほか、数は少ないながらも幅広い選択肢があります。
他にはどのような職場で活躍しているのでしょうか。

まず学校薬剤師。
学校保健安全法では大学を除くすべての学校に薬剤師を置くことが義務付けられています。
学校生活の中で薬剤師と接する機会はほとんどありませんが、どの学校にも必ず存在しています。
ただしひとつの学校に専任していることはほとんどなく、地元の薬局で働いている薬剤師が兼務する形で業務を行っています。
学校薬剤師で行われるおもな仕事としては、給食施設の衛生管理が挙げられます。

それから保健所の職員。
薬局や病院の開設を許可するための業務、食品衛生監視の業務などを行います。
意外なところでは、毒劇物取り扱い責任者や麻薬管理者、科学捜査研究所の職員などもあります。
これらも学校薬剤師と同様に専任はほとんどおらず、他の業務と兼務するという形となります。
このタイプではほかにも医薬品の輸入販売なども最近増えているケースとして挙げられます。
専任の仕事としては薬学部の教員があります。
薬剤師を目指す学生たちを教育する仕事です。
とくに6年制が導入されたことで、より質の高い教員が求められており、5年以上の実務経験を持つ薬剤師が専任教員の6分の1以上を占めることが義務づけられるようになりました。
珍しいケースでは化粧品メーカーで新製品の開発・製造に関わる場合もあります。
このように、薬剤師の活躍の場はじつに幅広い範囲にわたっているのです。

卸売一般販売業での薬剤師

余り目立たない職場ですが、卸売一般販売業も薬剤師の就職先として有力な候補です。
この卸売一般販売業とは簡単に言えば医薬品を取り扱う問屋のことです。
製薬メーカーによって開発された新薬はまずこの問屋に卸され、そこから病院や薬局へと運ばれていくことになります。
当然、医薬品を所蔵、管理することになります。
そのため、卸売一般販売業においても薬剤師の配置が義務付けられているのです。

では、卸売一般販売業において薬剤師はどのような仕事を行うのでしょうか。
製薬メーカーのような新薬の開発は行いませんし、薬局のような調剤も行いません。
もっとも基本となる業務は医薬品の管理です。
薬の中には劇薬になるものや、向精神薬など厳重な管理が必要なものもあります。
扱いを間違えると大変な事態が起こりますし、紛失や盗難のリスクもあります。
それらを防ぐためにも管理は欠かせないのです。
また、医薬品が正しい状態で卸せるよう、衛生状態の確認も重要な役割となっています。

それから情報提供。
問屋には病院や薬局から薬に対する問い合わせが多数寄せられます。
それに対して的確な返答をするとも、薬剤師の重要な仕事なのです。
相手に正しく医薬品を使用してもらうためにも、そして多くの顧客を獲得するためにも欠かせない業務となります。

そのほか、営業職に対して医薬品の正しい知識を提供し、教育することも求められています。
医薬品が正しいルートで私たちのものに届くために活躍する職場といえるでしょう。

製薬業での薬剤師

もっとも高収入が期待できる薬剤師の就職先が製薬メーカーです。
ここでは新薬の開発や販売などを行うことになります。
医薬品業界の最前線で活躍する場となるでしょう。
多くの薬剤師が製薬メーカーへの就職を望んでいるといわれています。
その分、狭き門となっており、薬剤師の中でもとくに優れた知識を備えた人だけがなれる職業となっています。

製薬メーカーでは続々と新製品を市場に投入しています。
この新製品は長期間の研究と綿密な実験のうえ、安全性に問題がないと判断されたうえで販売に踏み切られることになります。
その課程において薬剤師が果たす役割は非常に大きいわけです。
医薬品に使用する薬剤の作用、効果、禁忌、副作用などの情報を的確に指摘し、そのうえで効果を最大限に、副作用を最小限にするための努力をすることになります。

高度で専門的な知識が求められるため、特定の学会が認定する認定薬剤師の資格が求められることが多くなっています。
また、薬学部の大学院を修了した学生が製薬メーカーに勤めるケースが多いのも特徴です。
新製品の開発に関わる仕事を行うと、高収入を期待することができます。
30代なら1000万円を超えることも珍しくないといわれています。
薬剤師全体の平均年収が500万円強といわれているのを考えると、非常に高い水準にあるといえるでしょう。
ただし、ドライな成果主義を導入しているメーカーが多く、常に結果を出さなければならないというプレッシャーもあります。
研究職が向いている人に適した職場といえるでしょうか。

薬局での薬剤師の仕事

薬剤師の職場の中でももっとも多く、また安定した雇用環境が期待できるのが薬局です。
全国でおよそ13万5000人もの薬剤師が薬局で勤務しています。
では、薬局ではどのような仕事が行われているのでしょうか。

代表的なものとしてまず挙げられるのはやはり調剤業務です。
医師が処方した処方箋に基づいて医薬品を調剤して交付する業務です。
正しい調剤を行うことはもちろん、患者の体調やアレルギーなどを踏まえたうえで行うことが求められます。
必要ならば医師と改めて処方箋の内容を問い直すことも行われます。

それから販売業務。
処方箋で作られる医薬品のほか、一般用の医薬品や医薬部外品などの販売も行います。
この場合、専門的な知識に基づいて正しい医薬品の使用をアドバイスするのも重要な役割です。
その患者が医者にかかっておらず、治療が必要だと判断した場合には受診を勧めることも薬剤師の重要な役割となっています。
このように、薬局での薬剤師の仕事は調剤がまず第一となっていますが、いかに患者や客に相応しい医薬品を提供することができるかも大きなポイントとなっています。
患者ひとりひとりの健康状態を把握し、親身になって相談に乗り、的確なアドバイスをする。
利用者にとって心強い存在となることが求められているのです。
この点こそが薬剤師の他の職場ともっとも異なる部分といえるでしょう。
世間一般において薬剤師に求められる役割、そしてイメージにもっとも忠実な職場ともいえそうです。

薬剤師と調剤

薬剤師の仕事の中でももっともよく知られ、そして重要なものが調剤です。
医師や歯科医師、獣医師の処方に基づいて医薬品を作成するのが調剤です。
これは原則として、薬剤師のみが行うことが可能な仕事となっています。
それだけに非常に重要な意味を持っているのです。
調剤を正しく行わなければ患者の症状を軽減することができないばかりか、逆に健康を害してしまうこともあります。
最悪の場合には命に関わる事態に陥ることもあります。

そんな調剤は厳重な管理下のもと、慎重に行われることが求められています。
まず材料となる薬剤の管理。
医薬品の材料には麻薬や覚せい剤、毒薬、劇薬などとして使用するものもあります。
この管理がしっかりできていないと、盗難や紛失などの問題を抱えやすくなります。
薬局では薬剤師ひとりひとりに管理責任を徹底させたうえで調剤を行っています。
それから処方箋の確認。
たとえば、薬剤師法では処方箋に疑問点が生じた場合、それを確認して解消した後でなければ調剤をしてはならないという決まりになっています。
それから記入漏れなどのミスを防ぐため、処方箋に医師の署名など内容を確認することができるものを求めるようになっています。
これは処方箋の偽造による薬剤の紛失を防ぐためです。

また、調剤とともに薬剤師が行わなければならない業務に服薬指導があります。
つまり、医薬品を利用する患者に対して正しい服薬方法を指導するものです。
この指導は義務となっており、仮に患者が不要だと思ったとしても必ず行わなければならないものとなっています。
このように、薬剤師の調剤は非常に慎重な取り扱いのもとで行われているのです。

薬剤師のアルバイト

薬剤師の雇用形態として増えてきたのがアルバイトです。
厳しい経済状況もあってか、経費の削減のためにアルバイトとして薬剤師を雇うところが増えているのです。
アルバイトを募集しているのはほとんどがドラッグストア。
医薬品の販売のために薬剤師を常駐しなければならないところが圧倒的に多くなっています。

また薬局でもアルバイトを雇うケースがあります。
特徴としては女性が圧倒的に多いこと。
薬剤師の数は男4割、女6割程度の割合となっていますが、アルバイトに限ると7割以上が女性で占めています。
その背景には、男性は家計の柱となる必要があるため、アルバイトではなく正社員での雇用を目指していること、女性は家庭を持つと働く時間が制限されてしまうためアルバイトとしての雇用が適していることなどが挙げられます。
逆に言えば、育児や家事に忙しい女性にとってはアルバイトは非常に魅力的な選択肢となるのです。
夫の転勤などで引っ越した場合でもすぐに仕事先を見つけやすいというメリットもあります。

では薬剤師のアルバイトはどの程度の収入を得ているのでしょうか。
時給は平均2000円程度といわれています。
さすがに専門的な職種というだけあって、かなり高い水準にあります。
需要の高い地方ではさらに高い数字になることもあります。
この数字は正社員として働く薬剤師の時給換算と比べてもほとんど遜色ないものとなります。
もちろんボーナスや退職金などはありませんが、上に挙げたメリットを考えるとアルバイトという選択肢も薬剤師の雇用環境として魅力的といえるのではないでしょうか。

薬学部の費用

医療関連の学部は学費が非常に高いといわれています。
それは薬剤師を目指すための薬学部でも同様で、薬学部への入学を希望する際には学費が志望大学選びの重要なポイントとなることも少なくありません。
では、薬学部の学費はどの程度かかるのでしょうか。

大学の場合、国公立か私立かで学費が大きく異なってきます。
国公立の場合、6年間で平均350万円程度、4年間なら250万程度といわれています。
一方、私立の場合は格段に高くなり、6年間で1200万~1400万円程度、4年間でも700万~800万円程度といわれています。
このように、私立の場合は年間200万円程度の負担が必要となり、家庭の経済状況によってはとても通うのが無理というケースも多くなります。
そのため、多くの人が国公立への合格を目指し、難易度も高くなっているのです。

もちろん、学費のほか教材費などの諸経費もかかることになります。
地方から1人暮らしをしながら通う場合には、その費用も馬鹿にならないでしょう。
2006年の薬学部6年制の導入によって学費の負担がさらに大きくなり、薬学部を志望する学生が大幅に減ったことが問題となりました。
負担の大きい私立大学では、その3割ほどが定員割れを起こしている状況です。
また薬剤師の過剰問題やアルバイトや派遣社員など、雇用環境の不安定化などもあり、高い学費を払って薬剤師になっても元が取れないという問題も浮上しています。
この学費と薬剤師を巡る環境のアンバランスは、今後大きな問題として浮上してくるのではないかという指摘もあります。

薬学部とは

薬剤師になるためにはまず大学の薬学部において課程を修了しなければなりません。
では、この薬学部とはどのようなものなのでしょうか。
現在国内には薬学部を設置している大学が62ほど存在しています。
薬剤師を目指す場合にはまずどの大学にするかを選ぶ必要があるのです。
薬学部は事実上、薬剤師の養成機関となっているためにその選択は重要です。
大学のレベルによって薬剤師試験の合格率が異なってきますし、また大学によっては研究者の育成を重視しているところもあります。
薬剤師の取得を目指すだけでなく、その後の進路も念頭に入れた上で大学を決定する必要があるのです。

この薬学部は2006年の6年制導入によって様相が大きく変化しました。
6年間在籍して学び続ける必要が出たため、学生、その家庭両方の負担が大きくなり受験者が減少するという現象が起こったのです。
2009年には薬学部の約30%が定員割れを起こしているほか、私立の大学では偏差値の下落が大きな問題となっています。
これは、将来的な薬剤師の質と量の両面における不安材料ともなっています。

毎年卒業する薬学部の学生は2009年の数字で約1万693人。
そのうち男性が4598人、女性が6095人となっています。
医療に関わる分野では非常に珍しく、女性の方が多い数字となっています。
卒業生の進路が非常に多岐に渡っているのも薬学部の大きな特徴で、薬局や病院への勤務が多いほか、大学院へ進むというケースも目立ちます。
大学院を修了した場合、就職先では製薬会社がトップを占めるようになります。
この点も、将来的な就職環境を考えた上での選択が重要になってくるのです。

薬学部を巡る環境は6年制の導入とともに、今後さまざまな変化が生じるとも言われています。
これから目指す学生にとっては事前の情報収集が大きなポイントとなるでしょう。

薬剤師と予備校

薬剤師になるためには薬学部を卒業するだけではなく、国家試験に合格する必要があります。
ですから卒業するための勉強だけでなく国家試験に合格するための勉強も必要になるのです。
では薬剤師を目指す人はどのような方法で勉強しているのでしょうか。

そんな勉強方法のひとつに予備校があります。
薬剤師専門の予備校に通い、試験に合格するための専門的な授業を受けるのです。
薬剤師の試験は70%~80%程度と非常に高い水準にあります。
しかし、逆に言えば4~6年間薬学部に通い続けても4人に1人の割合で試験に落ちるわけです。
そう考えると、国家試験は決してやさしいものとはいえないでしょう。
そのための対策として、予備校が重要な役割を果たすこともあるのです。
それから試験に落ちた場合。
薬学部を卒業すれば国家試験の受験資格を得ることができますから、1年間勉強して翌年の試験に備えることになります。
その1年間を予備校でじっくり対策をしながら過ごすことによって、次回の試験に合格する準備をすることができるわけです。
一度試験に落ちた人、つまり既卒者は合格率が40%程度と一気に低くなります。
現実は非常に厳しい状況にあるだけに、予備校での対策が大きな意味を持ってくるでしょう。

このように、薬剤師の国家試験対策に予備校が大きな役割を担う場合もあります。
ただし、薬剤師の予備校は限られており、とくに地方にはほとんどないというのが実情です。
そのため、場合によっては薬剤師を目指す際に予備校が近くにあるような環境を整えるのも視野に入れる必要も出てくるのです。

職場による収入の違い

薬剤師の特徴として挙げられるのが職場の多彩さ。
医師はもっぱら医療関連の施設で勤務するのに対し、薬剤師の場合は非常に幅広い活躍の場が用意されています。
そのため、職場や環境によって収入に大きな違いが生じるという特徴も見られています。
では、どの職場がもっとも収入に恵まれているのでしょうか。

もっと収入が多いといわれているのが製薬メーカーでの勤務。
新薬の開発に携わっている薬剤師なら30代で1000万円を越えるケースも少なくありません。
重要な役割を担っているだけに、これくらいの収入は当然なのかもしれません。
ただし、新薬の開発には高度な知識と実績が求められるため、非常に狭き門となっています。
また外資系を中心にドライな成果主義を導入しているところが多いため、成果を挙げられない場合には収入の減少やリストラの対象になりやすいといった面もあります。

収入の多さではドラッグストアも候補に挙げられます。
店長クラスになると700万~800万円程度にまで達することもあります。
ただし店の売上げに左右される面が大きく、またアルバイトでの雇用も多いため同じドラッグストアでの勤務でも格差が生じやすいという特徴があります。

安定した雇用環境と収入なら病院と薬局での勤務。
どちらも400万~650万円程度が平均年収となっています。
景気の影響を受けにくく、安定した収入を長期間得ることができる選択肢となります。
多くの薬剤師は病院か薬局の正社員として雇用されるのを目指すようです。
このように、職場による収入の違いは薬剤師の特徴として把握しておく必要があるのでしょう。